映画『『アンダルシアの犬』、『黄金時代』
ブニュエルはダリが自分を描いた肖像を気に入っていました。1924年<学生館>時代の作品です。意志の強いマッチョらしく描かれ、後に仲違いしたあと描かれた≪眠り≫と好対照です。

映画制作者としての自立を望むブニュエルは、シナリオにダリの協力を得て、これぞシュルレアリスムと世間を驚倒させた映画『アンダルシアの犬』を制作します。映画の冒頭、女性が見開いた眼をナイフが切り開くシーンがショッキング、ピアノの上に腐敗したロバが乗せられ、それと共に牽引される僧服姿の人物としてダリ自身も出演しています。脈絡がなくショッキングなシーンが連続するこの映画は1929年6月パリで公開され、ピカソ、ル・コルビジェ、マックス・エルンスト、コクトー、ブルトン、マグリットほかそうそうたる観衆が拍手喝采しました。


題名の『『アンダルシアの犬』はアンダルシア出身のロルカを当てこすったもの。その頃シュルレリスム・グループに傾斜し始めたダリとロルカの距離は離れつつありました。
この映画やダリがパリへ自分の絵のサンプルとして持参した≪春の最初の日々≫に興味を抱いたシュルレアリストの面々がグループで、その夏、カダケスにダリを訪問します。その訪問がガラとダリの出会い、また第1回パリ個展に結びつきました。(付記)この作品は、ダリに対するフロイトの『性理論』と『夢判断』』の影響が顕著です。その詳細についは前掲松岡論文(2)ご参照ください。

1930年、ブニュエルはサド侯爵の縁ににつながるノアイユ夫妻の資金援助を得て新しいシュルレアリスム映画の制作に着手し、そのシナリオ作成にダリも参加しました。『黄金時代』とタイトルをつけたその映画はその年パリで公開されましたがその反宗教的な描写がスキャンダルとなり、ダリは共同制作者として世間の攻撃にさらされます。一方ブニュエルはMGMの誘いを受けハリウッドに出発していました。


独りパリに残され、攻撃を一身に受けたたダリは恨みをいだき、後年の1937年ブニュエルの風貌で≪眠り≫を描きました。この作品は、当時NYにいたブニュエルの目に触れるよう展示されました。

ダリは、後年ハリウッドから映画制作に関係することを要請されます。その中で有名なのは、絶頂期のイングリッド・バーグマンとグレゴリー・ペックが主演し、ヒッチコックが監督、セルズニックがプロデュースした『白い恐怖』(原題Spellbound)です。この映画は記憶喪失を扱ったサイコスリラーで、主人公の幻想シーンにダリは文字通り「目玉」として協力しました。

