声楽の学び方

まず、最初に断って置きたいことがあります。楽譜の読み方、私の学生時代はドレミファの音の間隔を覚え、調が変わってもその感覚を重視して読み替える移調方式でした。最近と言うか、かなり前からそのやり方は流行らなくなり、学校でもCはド、C#もドと読ませる絶対音方式に変わっています。

それで何が起こるか、楽譜を見ただけでは歌えない人が続出しています。人間は、キーを押すと同じ音の出るピアノやフレットの抑えで音を変えるギターのような存在ではありません。2度、3度、4度、5度と、音の跳躍の感覚を身につけ、メロディと言うか、音の流れを感じる必要があると私は思っています。神大オケの指揮者で親友だった故田中清三郎さんも声楽に関しては同じ意見でした。では楽譜を読んで音出しできない人はどうするか?

コーリューブンゲンのすすめ

合唱団によっては、ピアノで音出ししたり、CDで模範演奏を用意したりして、各パートの音を覚えてもらっています。それはそれで一つの効果はあると思いますが、私は歌をやるなら、最低でも譜読みの基礎の基礎「コーリューブンゲン」で音の跳躍を覚えること、欲を言えば言えば「コンコーネ」でメロディの歌い方を勉強することをアドバイスします。

合唱の歌い方、ソロの歌い方

合唱を一口で言えば、団員が一丸となって指揮者の音楽表現に協力する行為です。曲の歌い出しや終わり、音の強弱、テンポ、リズムを揃えることは当然ですが、ハーモニーの美しさや変化を楽しむことも大切です。

伴奏のないア・カペラ演奏で聞き苦しいのは音の高さが不安定で、俗に言う「音が下がる」ことでしょう。曲の歌い出しの音の高さが途中や終わりで半音以上も下がる現象を、まま見かけます。ハーモニーしない、あるいはハーモニーしていても音が下がってしまう原因は「発声法」の誤りにあると言うのが私の見解で、それを矯正するのは頭声の意識と呼吸法。それについては後述します。

ソロについては、もう少し別の発想が必要です。映画『太陽のテノール、パヴァロッティ』で興味深いことが語られていました。参考になったのは、呼吸法の話。横隔膜をコントロールして響きを保つコツをオーストラリア巡業に同行したサザーランドの体に触れて会得したとか、歌手にとって呼吸が大事と今さらながら知らされました。また、歌詞を噛みしめ、感情を込めて歌うことの大事さも強調していました。

呼吸法を会得して声の響きをつくる

発声のコツを一言で言えば「あくび」です。「あくび」をするときは無意識に背中から下腹に深く息を吸っています。また、喉も下がり力を入れない状態で開いています。コレを意識的にしてみましょう。その状態を保ちながら、胸郭を前後左右に拡げると、息がさらに入ると同時に横隔膜の張りが得られます。横隔膜を使って息の動きをコントロールするのは下腹中心、内蔵の動きです。注意するのは肩を上げないこと。胸を反らせるのはgoodですが、肩を不用意にあげると息の圧力が失われます。

息を深く吸って下腹を締め、胸郭を拡げます

『あくび』をすると下顎がさがり、のどの奥が開きます。この状態を保って小さく「アー」と声を出してみます。音を高くして行くとファルセット気味な声になりますがこれが「頭声」です。「頭声」を持たない人が、いわゆる地声で混じるコーラスは音が揃いません。ハーモニーせず音が下がってきます。

『太陽のテノール』では男性はみんなバリトンだが、鍛錬を重ねてテナーの声を出せる様になると言っていました。高い声が出ないと思う人も諦めず「頭声」を勉強しましょう。

「頭声」と「胸声」のバランスも大事です。「頭声」ばかり意識すると音が上ずりますし、「胸声」が度を超すとフラットな声になります。

喉を開くと言うことは舌の付け根が下がり,声帯の創る音が喉頭蓋に邪魔されず共鳴して行くことを意味します。

舌を下の歯の裏に付けると喉が開きます

この映像も喉の開き方の参考になるでしょう。

高い声を出す喉の開き方

口の開け方と母音

口を開けて上の歯と下の歯の間に指を縦に2本または3本入れてみましょう。一流の歌手は口の開け方も美事、真似してみます。口の形を保ったまま「ア・エ・イ・オ・ウ」と発音すると舌の形が母音を変えることを認識できるでしょう。音の高さを変えて発声してみると、響きのあて方の訓練になります。

スマイル。ニコッと笑顔で両頬をつり上げます。耳の横に指をあてて凹みを感じると下顎が下がり歌う準備ができます。高い音を出すときは前歯が見えるほど口を開けましょう。

『カルーソー発声の秘密』119ページ、5つの母音の正確・不正確な発声図です。ご参考に。